Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON

J・ナッシュさんの「J・ガイル」

VS

戦慄の雲さんの「ギアッチョ」

マッチメーカー :かいがら
バトルステージ :礼拝堂
ストーリーモード :Semi Fantastic Mode


双方向対戦小説ジョジョ魂



ROUND  1



プロローグ 何事もない昼下がりに


 何事もない昼下がり。
 そして、ありふれた家族の再会。
 結婚を機に実家を離れた一人の男が、娘と嫁とを連れて父の下に帰ってきたのだ。
 当然のように、父は歓迎する。
 父である彼が、「初孫」に会うのももう2年ぶりだ。

 その孫は5歳の女の子。
 今一番かわいい年頃でもあり、そして「成長」していく年頃でもある。
 出来る事ならば、成長をずっと見ていきたいと、祖父である男は思う。
 しかし、わがままは言えない。
 もはや息子には、守るべき家庭がある。
 愛すべき家族がいる。
 その「守るべきもの」の前では、父である自分も邪魔となる日がくるかもしれない。
 邪魔者は、排除される運命にある。
 骨肉相争う関係など、誰が望むだろうか。
 そのような悲しい結末を迎えるかもしれないのであれば…
 自分は、長年付き添った妻と2人きりで暮らす方がいいかと思う。

 孫に会いたい。
 息子とも話したい。
 しかし、この「妄執」のために全てを失いたくない。
 ならば、距離を置くべきだろう。
 「欲望」の流れそのままに従わずに、得られるだけの幸せを集めていこう。
 そして少ないけれども、「機会」があれば、このように初孫の成長に思う存分目を細めたい…。
 距離こそは離れていても、いつまでも心だけは近づいていたい…。
 男はそう思う。

「父さん、かあさんは元気?」
「ああ、元気だ。お前達に会いたがってたぞ?せめて1年に1度は会いたいもんだなってな…パオロ」

 それを聞き「パオロ」は苦笑して言う。

「試合の日程が、なかなか辛くてね、固まった休みは取れないんだよ。
 オレだって父さんには会いたいけどね…。ほら、エリザベスだって喜んでるし」

 「おじいちゃん」を見つけるや否や、すぐにその胸へと飛び込んでいったリズ。
 「おじいちゃん」も初孫の前では厳格な面は見せず、ただただ笑顔である。
 そんなエリザベスの為にも、パオロもなるべく父シーザーの元を訪れたい。
 しかし…
 カルチョスターであるパオロが、そうそうプライベートな時間を持てるはずもなかった。
 自分のわがままのせいで、チームのみんなに迷惑はかけられない。
 カルチョとは、チーム11人が一心同体となって行なうスポーツである。
 どんなに卓越した技量を持っていても、どんなスピードを持っていようとも、自分の「欲望」のみに支配された選手は一流にはなりえない。
 それは、人生においても同じである。
 自分のわがままのせいで、父に、母に、妻に、そしてリズにどんな迷惑がかかるかわからない。

 しかし、心だけはずっと離れてはいない。
 そして、体の中に流れる「ツェペリの血」も、いつまでも一緒だ。

「父さん、ところで…。今日はリズのた…」

 パオロが口に仕掛けたセリフを、シーザーは手で制し、そして
「大丈夫だ…。家でびっくりさせてやりたい…。」
 と、笑顔で返す。

 パオロも、シーザーも、互いに思う。

 今のままでいいじゃないか。
 「永遠」に会えないという訳じゃないんだし。
 今のままが一番無理がなく、いつまでも心は近づいていられるだろう。
 これが「本当の家族」だと。

 パオロ一家を家に迎え入れながら、シーザーは考える。
 リズの今年の誕生日には、何を送るべきかを。
 かつて自分の尊敬した人と同じ名前、同じ読みの「エリザベス」という名前以上に、どんな素晴らしいものが孫に送れるか。

 今年は、エリザベスにとって最高の誕生日にしてやろう…。
 心からそう思いながら、シーザーは「幸せ」を感じていた。

 何事もない、昼下がりでの出来事だった。


1.聖痕が語るもの


 風変わりな旅人が佇んでいた。
 華やかな街ミランに似つかわしくない、ボロをまとった旅人。
 一目見れば、誰もが「乞食」と勘違いするような風体。
 そして、フードで覆われた顔。
 通行人は、誰もが男を避けて通った。
 もちろん、嫌な顔をするのを忘れずに。

 しかし…
 この出会いは、通行人には「邪魔者との遭遇」であっても、男にとっては重要な「可能性のある情報源」である。
 彼は、通行人をいちいち呼び止めて、右手に握っている「もの」を見せる。
 彼の「右手」には、一人の男が写った紙切れ―写真がある。

 写真に映っている男は、どこか風変わりな身なりをしている。
 特徴のある髪型。
 全体的に整った顔立ち。
 そして、強い意志を秘めた瞳―

 男は「J・P・ポルナレフ」と言う写真の男を探しているようだった。
 朝から、いや、昨日から、もしかしたら、もっと前からずっと探しているのかもしれない。
 彼は、「いつか見つかる」という可能性に賭け、道行く人次々に声をかけているのだ。

 しかし、やはり通行人にとっては最初から最後まで、この出会いは「迷惑」以外の何者でもない。
 男に帰ってくる答えはお決まりの、そして聞き飽きた
「知らないね」
 という言葉ばかりだった。

 男が「ポルナレフ」を追い続けて、もう5年になる。
 追い続ける前には、男は逆に追われる立場だった。
 J・P・ポルナレフの妹、シェリーの敵として。
 J・P・ポルナレフの親友、アヴドゥルの殺害者として。

 男はポルナレフの恨みそのものであり、そして敵討ちこそポルナレフの生きるべき「意味」であった。
 最終的に、その執念の前に男は追い詰められ、そして―負けた。
 しかし、ポルナレフは男に止めを刺さなかった。
 DIOのスタンド能力を知るため、ポルナレフは「私怨」という欲望を捨て、大義に走った―
 泣きながら、苦悶しながら、男をそのままジョセフの元へと引きずっていった時のポルナレフの瞳。
 男はその澄んだ瞳を、そして悲しみを背負いながらも強いものを持った瞳を生涯忘れる事はないだろう。

 …結局、DIOの能力の「謎」を全て調べられた後、ジョセフの計らいによってこの男、J・ガイルは一命を救われ、放たれた。
 ポルナレフも「過ちを繰り返さなければ二度と追う事もない」と誓ってくれた。
 寂しげな笑顔と共に。

 その後―
 J・ガイルは「聖痕」によって、母がDIOに殺された事を知り、そして、DIOが破れたことも知った。

 彼の母、エンヤ・ガイルはDIOという「超越した存在」が「どこまでいけるか」というのを、楽しみながら見ていた。
 DIOから「この世の『絶対』」を垣間見ようとしていた。

 DIOは、誰よりも強烈で邪悪な「欲望」を思いのままに奮った。
 彼は、自分自身の力で、世界の、いや全ての「絶対者」となる事を望んでいた。

 しかし…
 その二人は、もはやこの世にはいない。
 「欲望」を基準に「絶対」を目指した者も、「絶対」を見る事を「欲望」としていた者も、滅んだ。
 輝ける「希望」を持った、ジョースター一行の前に…

 J・ガイルは…
 仏門に入った。
 欲望が生み出す事の無意味さを、希望と救済を、仏門に求めた。
 かつての「行為」の悔悟と懺悔を、無欲の「法」に求めた。

 結局、欲望が生み出したものは、彼にとっては最終的に「痛み」でしか抗われなかった。
 しかし、その「痛み」こそ、彼が立ち直るきっかけともなった。
 ポルナレフに斬られた傷の痛みは、欲望に全てを任せていた自分への戒めであった。
 母が殺された時に、母の傷と等しく聖痕から流れ出した血は、欲望の生み出す「罪の重さ」だと、聖痕が彼に語りかけたようだった。

 欲望を否定し、そして、「空」に近づく…
 J・ガイルはわずか数年で、寺でも有数の「有識者」となり、高僧達に「到空者」とも言われるようにもなった。

 しかし、たった一つの「執念」のため、彼は寺を出た。
 その執念の名は「贖罪」。

 ポルナレフに、罪を詫びたい。
 ただ、それだけのために彼は旅をする。

 この思いは、彼にとって最後の「執念」かもしれない。
 今、彼は寺を出て、この「執念」に忠実に動いている。
 これは「妄念」なのか、「空の発現なのか」…
 J・ガイルは自嘲しながらも、ポルナレフの姿を求める。
 いつか彼の前にポルナレフが現れるまで。


2.リズ


 J・ガイルは今日もミランの街でポルナレフを探していた。
 数日前、同じ旅人風の男から聞いた「よく似た男をミランで見た」という情報を信じて。

 …しかし、ここ数日行なったミランでの情報収集の結果は、はかばかしくない。
 道行く人々に聞いても、店の従業員に聞いても、彼に帰ってくるのは「知らないよ」という言葉と…そして、侮蔑の目であった。
 言葉はともかく…侮蔑の目は、正直辛かった。

 今日、はかばかしい結果が得られなければ…
 ポルナレフの故郷に立ち帰って、一から情報収集をやり直そう…。
 朝、ホテルを出る時にそうJ・ガイルは考えていた。
 しかし、時は無情にも過ぎて行き、辺りは闇へと包まれんとしていく。
 J・ガイルは「自分を追い、探していたポルナレフの気持ち」が少しわかった気がした。

 軽い嘆息と共に、その場から立ち去ろうとするJ・ガイル。
 車のキーをポケットからまさぐり出しつつ、すでに明日の事を考えて。

 その時、彼は「視線」に気が付いた。
 見知らぬ少女がじっとこっちを見ている事に。
 その目には、侮蔑も悪意もない。
 むしろ、その澄んだ瞳は「好奇心」と「好意」に満たされていた。
 優しげなその眼差しは…
 J・ガイルに注がれ続けていた。

「お嬢ちゃん、私に用事があるのかな?」
 出来るだけ自然に、J・ガイルは少女に話し掛ける。
 少女が自分の何処に好奇心を持っているのか、知ってみたい気がしたから。
 少女はいきなり声をかけられてちょっと戸惑ったみたいだがすぐに

「わたし、『お嬢ちゃん』じゃないよ。『えりざべす』ってなまえがあるもん」

 と、満面の笑顔。
 例えるなら、夏に咲く向日葵の様な笑顔。
 昔ならば、襲うのに充分な「かわいさ」である。
 しかし、彼はもはや昔の「J・ガイル」とは違う。
 その笑顔は、今の彼には欲情でなく、安らぎを与えた。

「じゃあ、リズって呼んでもいいかな?リズはここで何をしているの?」
「んとね、おとうさんをまってるの。かるちょのしあいがおわるまで。」

 少女の指差す方向にはかの有名な「サン・シーロスタジアム」がある。
 少女の父親はカルチョでも観戦しているのだろう。
「赤い軍団」が次々と出てきている所を見ると、どうも試合は先ほど終わったようだ。

「リズ一人で来たのかな?こんな時間にリズ一人だと危ないぞ?」
「自分の過去の経験」を思い返しつつ、J・ガイルは話す。

 それに対して少女は屈託ない笑顔で
「おかあさんときたけど、おかあさんがいいこだからここでまってなさいっていって、おてあらいにいっちゃったの」

 なんて無用心な親だ、と呆れながら、J・ガイルはまだ尋ねる。

「さっきから私の事を見てるみたいだけど、私どこか変かな?」

「おじさんがね、こまってるからみてたの。
 おとうさんもおかあさんも、こまってるひとはたすけてあげなさいっていってたの。
 だから、たすけようとおもってたの」

 嘘も悪意もない口調で、リズは「気にしていた理由」を言う。
 実に優しい子だ。
 親のしつけだとしても、なかなかここまで優しい子にはならないだろう。
 この子の「天性」なんだろう…

 J・ガイルはそう感じつつも写真を見せる。
 せっかく助けてくれるって言ってるんだし、一応こんな少女でも聞いておかないとな…と感じて。

「お嬢ちゃん、このお兄さん、知ってるかい?」

 最初から「悪い返事」を期待した質問。
 J・ガイルも「苦笑する予感」を、自分の心の中に秘めたままで写真を見せた。
 本当に、何の期待もせず。

 リズはプクッと顔を膨らませる。
 やっぱり、知らないか…
 そう思った時

「私、お嬢ちゃんじゃないもん」
 という、予想外の返答。
 リズのこの表情をJ・ガイルは初めて見たが、やっぱりリズなりに「怒って」いるのだろう。

 J・ガイルはしまったなという顔をしながら
「ごめんごめん…で、リズ、写真の人は知ってる?」

 と改めて聞き直す。

 リズは写真を必死で見ている。
 しかし、J・ガイルは全く期待していない。
 こんな少女が知っているのなら、もうとっくの昔に見つかっててもおかしくない…

 ところが―
 J・ガイルの「予感」は、全く予期せぬ方向で裏切られた。

「うん、しってるよ。ぽるなれふっていうおじちゃんでしょ?」

 J・ガイルはそれこそ「開いた口が塞がら」なかった。


3.冷気


「…ポ、ポルナレフを知っているのか!?」
 J・ガイルは驚愕した。
 今まで様々な人間にポルナレフの事を質問してきた。
 中には役立つ情報もあり、また逆にひどい侮蔑を浴びせられる事もあった。

 しかし、共通して言える事は、誰一人として「ポルナレフ」という名前すら知らなかったという事だ。
 ポルナレフが「敵討ち」の為に捨てた故郷でも、もはやポルナレフの名を知る者はいなかった。

 ところが、リズは写真を見て「ポルナレフのおじさん」と言った。
 彼の写真を見せて「ポルナレフ」と言ったのは、このリズが始めてだ。
 つまり―
 この少女は、ポルナレフを詳しく知っている!

「リズ、このポルナレフさんをどこで見たの?
 私は、ポルナレフさんを探してずっと旅をしてるんだ。
 出来れば、教えてほしいな」

 喜び、驚愕、期待、安堵、不安。
 色んな感情が入り混じった状態の中、何とか「笑顔」でJ・ガイルはリズに問い質す。

「えっとね、おとうさんのおともだちだよ。
 なんかいもおうちにきてるもん。
 いっつもおかしとかくれるし、おうたもうたってくれるの。
 わたし、だいすき」

 リズも笑顔で返す。

 ついにポルナレフの足取りが掴めた。
 しかも、このリズの父親の「親友」だという。
 リズの父親に会えばもっと詳しい事が聞けるかもしれない。

「リズ、ありがとう。
 おじさん、どうしてもポルナレフさんに会いたいから、リズのお父さんにも会ってお話を聞きたいな。
 おじさんもリズのお父さん、待っててもいいかな?」

「うん、いいよ!
 おともだちになろ!
 おじさんのおなまえは?」

 お互いに笑顔。
 J・ガイルも初めて「人らしい人」と「人らしく会話」出来た事に非常な喜びを感じていた。

「おじさんはね…
 J・ガイ…」

「てめーらよォ…!
 話長いんだよッ!
 イラつくんだよッ!」

 名乗ろうとした時の突然の怒声。
 その声は、二人に浴びせられているのは明らかだった。
 J・ガイルとリズは同時に「振り返」る。

 そこには、奇異な髪型をし、眼鏡をかけた男が立っていた。
 服装や髪型からして、かなり特徴的な部類に入る。
 一度見たら、すぐには思い出せないかもしれないが「忘れる事は無い」風貌の持ち主。

 つまりは―
 そこには、J・ガイルが全く知らない男が立っていた。
 リズの方も、その大きな目を文字通り「まんまる」にしている事を考えると、どうもこの男の事は知らない様だ。

「君は、誰だ?
 いきなり、何の用だ?」

 J・ガイルはとりあえず怒りを抑えて、妥当な言葉を選んだ。

 しかし、そんな反応はお構いなしに「男」は話し続ける。
「おい、オレはロリコン男にゃ興味がねーんだよッ!
 そっちのガキの持ってるもんに用事があるんだ…
 邪魔だ、ウセやがれ!
 痛い目見たくなきゃぁな!」

 リズはJ・ガイルのズボンをしっかりと握り締めている。
 叫びこそしないものの、やっぱり怖いらしい。

 J・ガイルはそのリズの態度を見て、さらに怒りを覚えた。
 年端もいかない子供からこの男は「何か」を奪い取ろうとしているらしい。
 しかも、こんな公道でだ。

 かつての自分もそうだった。
 幼い者・弱い者からあらゆるものを奪ってきた。
 場所や時間なんかも選ばない。
 本当に好き勝手やってきた。
 自分は「特殊」だからこそ、あらゆる事が許されると思っていた。

 そして今彼を見るに、まさに「昔の自分」を見ているような気になる。
 「欲望」のまま、「妄執」のまま、動く人間―
 だからこそ、余計に許せなかった。
 幸いにして、自分には「吊られた男」がある。
 いざという時には、スタンドの力を利用して「眠って」もらおう。

 そう心に決め、J・ガイルは「男」に強い口調で返す。
「残念だが…。
 リズは私の友達だ。
 君がリズから『何か』を強引に奪おうとしているんだったら、私は黙っては見ていられないな」

 「男」はそれに対して、J・ガイルも見慣れた「嘲笑」をしつつ、言葉を返す。

「テメー、ロリコンで自信過剰かァ!?
 …いいだろう、ヤッてやろうじゃねぇか…。
 もう、助けてって言っても聞かねェぞ?
 オレに逆らったら痛い目見るって、わからせてやるぜ…」

 そう男が言い放つとほぼ同時―
 J・ガイルは異様な「冷気」を感じた。
 この時期にはありえない「冷気」!
 こいつ、まさか!

「寒いか?
 心配すんな。
 テメーはもうすぐ、寒さなんか感じなくなるからよ…」

 「男」はニヤニヤと笑いながら、J・ガイルに近づいてくる!

 このままではマズい!
 ここでは…戦えない!
 そして、この男の「スタンド」は未知数!
 …仕方ないが、ポルナレフと花京院が使った「手段」を使うしかない。
 この場は引いて…

 J・ガイルはそう考えると、自分の車へと走り出した。
 両手で半泣きのリズを抱きかかえつつ―

 あっという間だった。
 車にはエンジンがかかりっぱなしだったのか、J・ガイルが飛び乗るや否や、車は男の視界から離れていく。

 それを半笑いで見送る男―ギアッチョは一人で呟いた。
「逃がしゃしねーぜ…」


4.暗殺チーム


 ギアッチョは車を「追いかけ」つつ、思い出す。
 二日前に出た、この面倒くさい「任務」の事を―

 その日はとりたてて何もない日のはずだった。
 ギアッチョも、いつものように粗捜ししては自宅のものを叩き壊し、ストレスを解消させていた。
 その声は、家の外にまでも響いている。

「クソッ!クソッ!」

 それを聞きながら苦笑する男は―
 尋常でないほど、「小さ」かった。

「まぁたやってやがるぜ、ギアッチョのやつ…
 しょうがねーなあ〜…」

 男は、その玄関の前で「普通の大きさ」に戻り、ドアを開ける。

 そして男が見た部屋の中は…
 台風が通った後の様だった。

「ったくよぉ…
 しょーがねえなあー…」

 苦笑しながらこの部屋の「主」に目を向ける。
 やはり不機嫌そうなギアッチョが、その部屋にいた。

「ノックして入れって言ってんだろぉがよォ!
 …何の用だァ!?
 『任務』かァ、ホルマジオ!?」

「ま…
 そんなもんだな。
 機嫌悪いみてーだから、一言で言ってやるよ。
 『決行』だ。
 ボスの娘の行方がわかった」

 その言葉に、ギアッチョの表情は変わる。

「アァ!?
 見つかったのかよ、ホルマジオ!
 じゃあ…」

「ああ…
 どうも、ペリーコロからポルポに託されるらしいぜ…。
 だから、万が一に備えて『両面作戦』を使うぜ。
 オレとイルーゾォはポルポを狙う。
 ペッシとプロシュートはペリーコロを狙う。
 これで、万が一もねぇ…
 どっちにしろ、組織を『乗っ取る』には、始末しなきゃいけねぇヤツらだしよ…」

「おい、テメーのくだらねースタンドでポルポを始末出来んのかよ…
 それにオレとメローネと、リゾットはどうすんだよ?」

 ホルマジオは口癖の「しょーがねぇなあー」を口にしつつ、苦笑して言う。
「オレのスタンドはお前から見たら『くだらねー』かもしれねーけどよ…
 スタンドは使い方次第だからな…
 ま、お前にゃわからねーかもしれねーけどな…
 キヒヒ…」

「それよりも、オレはどうしろってんだ!?
 アァ?」

「落ち着けよ。
 メローネは遊撃隊だ。
 両方の手伝いをしてもらう事になる。
 リゾットは情報収集と、情報伝達だ。

 最後にお前は…
 『資金調達』だ」

 ギアッチョは聞きなれない言葉を聞き、さらに機嫌を悪くする。
「オレに銀行強盗でもしろってのかよ!?」

「ちゃんと最後まで聞けって。
 しょうがねぇなあー…

 銀行強盗なんか目立って仕方ねぇ。
 お前一人で計画ブチ壊す気かよ?

 いいか、ちゃんと聞け…?」

 そこから、ギアッチョにホルマジオが話した事は…
 今追いかけてるガキが、ものすごく価値のある宝石をじじいから譲り受けたという事だった。
 ガキは、そのプレゼントが嬉しくて、毎日手放してないという。

 ギアッチョは正直、腹が立っていた。
 ポルポだろうとペリーコロだろうと、自分の手にかかれば簡単に「始末」出来る。
 チームの中で、自分はリゾットの次に「強い」自信もあった。

 にもかかわらず、自分に与えられた「任務」は「ガキから宝石を奪い取って、それをカネに替える」という、すごくくだらねー任務。
 おまけにホルマジオの独断でなく、リゾットわざわざの「ご指名」じゃ断りようもない。

 こんなのはイルーゾォの仕事だろうがよ…
 そういらだっている時。

 ギアッチョは、乗り捨てられた車を見つけた。

 さっき見たのと同じ型。
 キーも抜かず、急いで降りた後。
 そして、正面の建物「ドゥオーモ」に駆け込む男。

「バカか、あいつ…」
 ギアッチョは嘲笑を浮かべ、その身をドゥオーモへと向けた…

 ドゥオーモ内。
 リズを連れて逃げ込んだJ・ガイルは辺りを見渡し、確信する。
 ここなら、闘える―
 そう思った時

「もう…逃げ場はねぇぜ?
 さぁ、思いっきり寒い思いしてもらおうじゃねぇか…」

 ステンドグラスの間を進む人影。
 見覚えのある髪型、そして顔。

 やはり、追ってきたか…
 J・ガイルの、正直な感想だった。

「リズ、奥に行って…
 おじさんが、この悪い人をお仕置きする間…」

「うん…
 がんばってね」

 リズの不安そうな顔に、J・ガイルは笑顔で返す。
 そして、リズは…
 奥へ奥へと駆け抜けていった。
 そう、そのまま…

「『ロリコン』ってよぉ…
 ロリータ・コンプレックスの略だよなぁ…。
 ロリータってのはわかる…
 ナボコフっておっさんが書いた少女偏愛小説だ…
 スゲーわかるぜ…

 だがよぉ、「コンプレックス」ってどういう事だああああ!
 このまんまじゃ『ロリータ』っていう小説が好きなヤローの事じゃねーか!

 ナメやがって、この言葉!
 超イラつくぜぇ!

 全部…テメーにブツけてやるぜ!
 このイラツキをよ!」」

 ギアッチョは怒りをいらだちを含ませながら、J・ガイルに近づこうとする…が。
 その足が止まった。

 明らかに苦しそうな表情、そして、首には「締められている形」

「て…テメー…!?」

 そんなJ・ガイルはギアッチョに嘲笑で返す。
「さぁ、寒くしてみろ…」


I.傍観者


 すてきな青空だった。

 イタリアという所には始めて来た。
 素晴らしい風景。
 伝統のある建物。
 あらゆる物が圧倒的なスケールで迫ってくるのがわかる。
 仕事を離れて、たまにはこうやってふらついて見るのもいいかもしれない。
 何か別の「やりがい」が見出せるかもしれない。
 もしイタリアが静かなところであるのなら、このままここに住み着いてもいい様な気がする。
 短時間ではあるがかなり気に入ったし、そしてここなら私も「幸福」になれる気がする。

 しかし…
 この場所にも「安息」はないらしい。
 今、目の前で男同士の「戦い」が繰り広げられようとしている。

 わたしはときどき考える。
 人は、何故争うのだろう。
 お互いの幸せがぶつかった時に戦うのか?
 じゃあ、「みんなが幸せに」っていうのは、「みんながガマンする」って事なのか?
 自分一人の幸せを願う事は、そんなに悪い事なのか?

 まぁ、彼らの戦いでも眺めながら考えるとしよう。
 どうせわたしには、「急ぐ」理由なんか何もないんだから…




To Be Continued !!


なんと! こいつはたまげたJ・ガイルの善玉転向! しかも仏門……!
「たしかに坊主は坊主だがよぉ……ウオオオオー!」 ギアッチョの吼え声が聞こえてきそう。南無〜(笑)

というわけで、のっけからの意外な展開もあり、面白くなってきた!
ハングドマンVSホワイト・アルバム! 真の無敵能力はどっちか? スタンドバトルもヒート!

J・ナッシュさんと戦慄の雲さんは、ラウンド2に向けて、それぞれ自分のキャラが『なにをしたいか?』、『何をしようとするか?』などをテキトーに書いてメールでお送り下さい!


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対戦ソース

J・ナッシュさんの「J・ガイル」 / 戦慄の雲さんの「ギアッチョ」


この対戦小説は J・ナッシュさんと戦慄の雲さんの対戦ソースをもとにかいがらが構成しています。
解釈ミスなどあるかもしれませんがご容赦ください。
J・ナッシュさんと戦慄の雲さん及び、J・ガイルとギアッチョにもありがとう!

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