Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON

葉水加狂さんの「ワイアード・ベック」

VS

坂崎悠乃さんの「東方仗助」

マッチメーカー :かいがら
バトルステージ :地下鉄
ストーリーモード :Fantastic Mode


双方向対戦小説ジョジョ魂



ROUND  1


1. 動機


 オレは…その時、飢えていたズラ。
 そして、乾いていたズラ。「興奮」を求めていたズラ。
 スリリングで、そして最高の興奮をもたらすものに…

 何に飢えていたのか、何に乾いていたのか。その時には全くわからなかったズラ。だけど、その「飢え」と「乾き」が大きくなるに従って、オレは「自分が今何をしたいのか」という事が全くわからなくなってきたズラ。
 少なくともそれまで、オレは自分が「異常」であるとは思ったことがなかったズラ。
 イングランドの片田舎に生まれて、そんなに不自由のない幼少期を送ったズラ。
 やがて、大学卒業後に「遺跡発掘」の労働のためにローマに移り住んだオレを、周りの人は暖かく迎えてくれたズラ。
 …やがて、オレには隣人が出来、親友が出来、そして恋人が出来たズラ。

 だけど、すでにその時には、心の中に何かしらの「虚ろ」である部分が存在した事は事実だズラ。
 遺跡発掘隊の中で、発掘隊の隊長に誉められるようなものを発掘した時も、仲間達と飲んでいる時も、恋人と楽しいはずの時を過ごしている時も、いつも他の「何か」を求めていたズラ。
 もちろん、賃金や自分の功名心・達成感の充実に関しては何の不満もなかったし、良い友達、優しく美しい恋人にも恵まれて、オレは正直「幸せ者だ」と思っていたズラ。
 …だけど、心の奥で渇望しているものは、何かわからなかったズラ。
 そんな屈折した感情を抱えた中、オレと、オレの親友であった男はローマの地下で「大発見」をしたズラ。

 …柱に、男が3人も埋まっていたズラ。そして、柱にはダイヤモンドが埋まっていたズラ。親友はそのダイヤモンドに惹かれたズラ。そして発掘隊の隊長や他の仲間たちがくる前に、そのダイヤモンドを取ろうとして…壁に飲み込まれたズラ。
壁に飲み込まれた親友は、跡形一つ残さずこの世から「消え去った」ズラ。オレはこの事をすぐに隊長に報告したズラ。
 そして…その後、この遺跡は封鎖され、オレは「忘れる」事を強制されたズラ。

 だけど、オレの「発見」はその柱の男じゃなかったズラ。柱の男は、確かに恐ろしかったズラ。ヤツらが何者なのか、何をしているのか、わからなかったズラ。
 …でも、それよりも…親友の断末魔の叫び、オレの名を呼び、助けを求める声、恐怖と苦痛に歪んだ顔が忘れられなかったズラ。
 そして、その姿に…何かを感じたズラ。
 そう、そしてその「何か」がオレの心を満たしてくれた、「エクスタシー」を与えてくれた…今までないような、大きなエクスタシーを…
 その事こそが大発見だったズラ。人の苦痛、人の恐怖、人の不幸、それこそがオレを満たしてくれる、それがわかったズラ!
 これで「虚ろ」から解放される!オレは自分なりの「幸せ」を見出した!
 そう実感したズラ。

 そしてしばらくしたある夜、彼女と二人でいる時…
 オレは飢えていたズラ。腹ではなく、心が。
 そして、乾いていたズラ。喉ではなく、精神が。
 スリリングで、そして最高の興奮をもたらすものを、この手で掴みたい。
 また、あの断末魔の叫びを聴きかったズラ。絶望の表情を観たかったズラ…

 これが、オレを「死刑囚」とした原因ズラ。
 だけど、オレには「罪悪感」なんかちっともなかったズラ。
 世の中の人間は、皆オレの為にくたばればいい、正直にそう思ったズラ。

 結局、オレはエクスタシーを求め、「快感」を味わいつつ、「牢」という籠の中から飛び出したズラ。
 その逃亡中…漆黒の中で、オレは運命の転機となった「もの」を見たズラ。動くはずもないもの、いや、動いてはいけないものを…
 そして、それ…というか、ヤツは静かにオレに尋ねたズラ…

「お前、力が欲しいか?」


2. 転機


 要塞風の洋館―地元では、長年使用されていない「幽霊屋敷」として語られる―そこに二人の男が立っていた。いや、「立っている」のは一人で、もう一人はその足元にうずくまっていた。
 人のいないはずの洋館に人がいる―それだけでも奇妙な絵ではあるが、この二人にはさらに「奇妙」であった。

 立っている側の男の周りには「シャボン玉」が浮いていた。しかし、いつまで経っても割れる気配のないシャボンは、単なるそれとは違う「強い力」のようなものを感じられた。
 廃墟の中に浮くシャボン玉―それは、陽光を浴びる事で虹色に輝き、まるで、そのシャボンの中心に立つ男、シーザー・アントニオ・ツェペリの「人間としての『誇り』と『魂』」を表しているようだった。
 それは同時に、人間の生の「美しさ」も示していた。

 そして、うずくまっている方の男は…「溶けて」いた。
 すでに上半身の右半分、そして下半身が「溶解」しており、呼吸が無事に出来ているのかどうかもわからない。そして、その「傷口」は、周りの細胞を更に溶かし、侵食していく…
 この「柱の男」ワムウに残された道は、もはや滅する事のみであった。

「やっと…父さんの、マルクの敵が討てたぜ…」

 誰に聞かせる訳でもなく、シーザーはつぶやく。そのつぶやきに答える訳でもなく、ワムウも

「久しく…久しく満足なる戦いだった…」

 とつぶやく。

 そしてしばらくの静寂―その後に、ワムウは言った。

「波紋戦士は…人間は、短期間で成長するとは、カーズ様の言葉か…?フッ、確かにその通りだったな…シーザー、短期間でよくもここまで強くなったものよ…尊敬に値するぞ…はやく、オレにとどめをさすがいい…」

 しかし…自分の父を、親友を殺した男に、シーザーはとどめを刺さなかった。いや、刺せなかった。
 戦いを通じて、ワムウが真に誇り高い「戦士」である事を理解したシーザーには、一撃で全てを終わらせる事など出来なかった。
 むしろ、このまま「自分の戦闘」に後悔せず、ただ滅びの道を受け入れんとしているワムウに「奇妙な友情」を感じた…

 再び、しばらくの沈黙の後

「オレは…お前の事を生涯忘れないぜ、ワムウ…」

 という言葉が静寂を破る。

 その言葉は耳に届いているのか、それとももはや聞こえないものの、「感覚」とし伝わったのか…いずれにせよ、満足げな笑みを浮かべ、ワムウは風になった―
 その風は、シーザーを優しく包んでくれた。

 再び静寂が空間を支配せんとした刹那―

「そこかッ!」

 という声と共に、シーザーの周りにあったシャボン群が正面扉へと飛んでいく!
 シャボンの連撃、「シャボンランチャー」を喰らった扉は奇妙な音を立て、地下室へと落ちていった。

「…吸血鬼…?オレの気のせいか…?」

 そうつぶやいたシーザーは、何時の間にか自らの後ろに心強い師と友がいる事にようやく気付いた。


3. 甥っ子のお願い



「イタリアッスかぁ〜!?」

 オレは素っ頓狂な声を上げちまった。
 だってよォ、いくら承太郎さんの頼みとはいえ、いきなり電話で「イタリアに行ってくれ」はないよなァ〜!おまけに承太郎さんと話す事自体、久しぶりなのによぉ〜…

「そうだ、イタリアだ、頼めるか?仗助…」

 って承太郎さんは電話越しに言うけどよぉ、オレ承太郎さんの事、まだ掴みきれてね〜時があんのに、電話越しじゃ全くその意図がわからね〜っつうか…。
 それによぉ、承太郎さん、何でオレがイタリアに行かなきゃいけね〜か、まだ説明してもらってないッスよ…

 別にオレはイタリアが嫌いなわけじゃね〜よ?
 トニオからいつも聞くイタリアのイメージはオレ好きだし、それに今イタリアには「承太郎さんの用事」のついでで観光旅行している康一がいる。
 アイツとも久々に会いてぇしよぉ…行きたいけど、な。

 けど、承太郎さんの「用事」ってのは一筋縄じゃいかねぇ事が多すぎるしよぉ〜…
 康一だって、イタリアに行って早々になんだかトラブルに巻き込まれたみて〜だしなぁ。
 おまけに、オレは露伴とは仲良くねぇし、イタリア語なんて当然話せね〜。行っても
 コトバのカベってモンが出来ちまうしなぁ〜
 …いや、前言撤回だ。露伴とは仲ワリイ
 はっきり言って、モノなんか頼める間柄じゃねぇよなぁ〜…

 って、ウジウジ考えても仕方ね〜から、とりあえずオレは、何でイタリアに行かなきゃいけね〜のか、訳を聞いてみた。
 すると承太郎さんは急にジョセフジジイの若い時の話を始めた。
 ジジイがこっちに来た時もオレに言ってた「とんでもない話」だ。

「波紋」っていう、「スタンド」とは違う能力でジジイとジジイの母親、そしてジジイの親友が怪物を倒していく話…

 オレは今までジジイが見栄張ったか、ボケたかして言ってた「ウソ」だと思ってたんだけど、承太郎さんが同じ事言うんだからどうもウソじゃね〜みて〜だな…

「で、承太郎さん。ジジイの昔話なんかしてどうしたんスか?まさか、その怪物が生き返ったとかじゃないッスよね?」

 オレは何にもわかんね〜んで、とりあえずまた聞いてみた。
 そうしたら、承太郎さんはやっと本題を話し始めた。

 ジジイの友人であるシーザー・ツェペリさんが現在ローマに住んでいる事そのツェペリさんが「吸血鬼の生き残りらしいもの」についての情報を得た事
 「吸血鬼」というのは、昔承太郎さんが倒した「DIO」と同じ能力を持ったものであるという事
 その「吸血鬼」の正体がわからず、またDIOの様にスタンドを使う危険性があるので、戦力として「スタンド使い」を二人ほど差し向けて欲しいとジジイに要請した事承太郎さん自身は研究の発表で忙しく、イタリアには赴けない事そこで、現地にまだ滞在している康一とオレでそのツェペリさんの手伝いをしてもらいたいという事

 そして最後にこう付け加えた。

「吸血鬼がさらに被害を拡大させる前に何とかせんとな…すまないが、仗助。行ってくれないか?オレはお前を頼りにしたいんだが…」

 …はっきり言って、承太郎さんに「頼りにしている」って言われて、断れるわけね〜。
 おまけによぉ、これってジョースター家の問題に深く関わってるような気がしてよ…
 オレって、結局ジジイの息子になるから、断るわけにもいかねぇしよ…
 そんなこんなで、結局この「依頼」を受けちまった。
 そしたら承太郎さんは少し安心したような声で、すぐに航空券や詳しい内容を書いた資料などを手配し、郵送するって言って、電話を切っちまった。

「すまないな…仗助」

 って言葉を締めにして。
 承太郎さんに期待されてんだから、せいぜい頑張りたいもんだぜ〜。

 さて、と…
 ムカつくけど、露伴ントコに言って、イタリア語の件、頼むか…


4. 孤独


 …静寂。今、それがオレを支配していたズラ。


 カーズ様に拾われて、オレは「隠れ家」の一員になったズラ。
 カーズ様はオレ以外にも、オレと似た「癖」を持った人間にどんどんと「力」を与えたズラ。
 隠れ家の生活は、それこそ刺激的だったズラ。
 オレと同じ様な体験をした男たちが、興奮と快楽について話し合う。

 ある一人は、路上で次々と人のノド笛を切り裂いた
 また別の男は、爆弾と放火によって、人々の狂乱と絶望を垣間見る

 …正直、楽しかったズラ。こんなにも「抑制から解き放たれた同種」がいるとは思わなかったズラ。
 そして、カーズ様は「究極生物」になった暁には「人間の虐殺」を自由にしていいと言ってくれたズラ。
 オレ達の悦楽の時は、もう近いと思ったズラ。人間どもが、オレ達の食糧となり、そして玩具と化す。本当に、楽しみだった…夢を見ているようだったズラ…

 しかし、その夢は無残にも打ち砕かれたズラ。
 突然の乱入者。そのシーザーと名乗る男は、最強であるはずの、不死身で無敵の力を持ったはずのワムウ様を、シャボン玉の技で倒してしまったズラ…。
 ワムウ様は最後に微笑みながら消えていったズラ。オレにはワムウ様の心がわからなかったズラ。ワムウ様をこれまで尊敬はしていたものの、何故死ぬ前に微笑むのかわからなかったズラ。

 「殺し」をした後に微笑むのなら理由はわかるズラ。
 最高のエクスタシー!殺しにはそれがあるズラ。

 だけど、自分が死んじまったら何も残らないズラ。
 他の人間がオレの死にエクスタシーを感じるかもしれないけど、オレ自身には何も残らないズラ。
 オレは何としてでも生き延びたいズラ。生き延びて、最後まで快楽を味わい尽くしたいズラ…

 そう考えていると…オレの隠れている扉に気付いたのか!
 シャボンの連撃が「オレの隠れている扉」を襲ったズラ!
 オレはとっさに頭だけを防御したズラ。頭さえ残れば、何とか復活できる―カーズ様がそう言っていたのを思い出しての、とっさの行動ズラ。

 結局…オレは、扉と共に地下室へと転落していったズラ。しかし、もうその時点で身体は動かせられるような状況ではなかったズラ。
 「命」を落とすような致命傷ではないものの、足が、手が、胴体が、チーズのように溶けていたズラ。熱く、痛かったズラ。
 不幸中の幸いか、オレの頭にこの「波紋」とかいうのが回る事はなかったズラ。
 そして、シーザーは、その仲間とカーズ様の部屋へと一直線に向かっていき…オレの事なんざ忘れちまったズラ。

 しばらく後に…頭の上で、大きな音が何度も響いたズラ。
 弾丸が鉄板にぶつかるような音…、そしてカーズ様のものらしき叫び声…
 静寂が訪れ、そのしばらく後に、3人分の足音が「屋敷」を出て行ったズラ。
 階下に落ちた事が幸いし―オレは「生き残った」ズラ。
 しかし…オレは、本当に一人になってしまったズラ。

 郷里には多くの家族や親友がいたズラ
 仕事先のローマには新しい仲間や恋人がいたズラ
 そして、牢獄には看守や他の囚人がいたズラ
 最後に、この仲間には同じ様なヤツらが、そしてカーズ様とワムウ様がいたズラ…

 「波紋傷」の為にこれ以上、身体を動かす事は出来ないズラ。
 この密閉された空間で、オレは孤独に過ごさなければならない…
 この静寂の時の中、オレは一人ぼっち…

 この時、俺に許された決断は「眠りに入る」事だけだったズラ。
 せめて、夢の中だけでも…
 オレにとっての悦楽の時間が………ズラ…


5. ケーブルテレビのニュース


『…では、次のニュースです。
昨日起きた、ローマ地下鉄での「乗員・乗客失踪事件」に解決に向けての新展開が見られそうです。
昨夜、A線コロッセオ付近で起きた「乗員・乗客失踪事件」、乗員乗客約50名が一気に消失した事件で、唯一難から逃れた少年が座敷シートの下に隠れていたのが発見されました。
少年は

「窓を破って大きな人が乗り込んできた」
「人の血を吸い取っていた」
「みんなその人とあと何人かにさらわれた」

などと、精神的に錯乱した発言を繰り返しており、事件の解決の為に早期の快復が望まれます。

隣国スイスでも、1月前に老朽化した建築物を解体中の作業員24名が一度に失踪した事件があり、一連の事件はヨーロッパ全体に影響力を持つ大犯罪組織・麻薬組織の関与も囁かれています。

では、次のニュースです。
第二次世界大戦中の首相で、1945年に処刑されたムッソリーニの墓が…』

そこでテレビがおもむろに切られる。

「杜王町でも2年前色々あったし…世界もブッソウよねぇ〜!仗助!アンタ今度イタリア行くんじゃなかった!?ったく気をつけなさいよ〜!」

そしてテレビの電源を切った女は、そのまま奥の部屋へと入っていった…


6. 仗助INイタリア


 ったくヨォ〜!
 なんで露伴のヤローはあんなに嫌な奴なんだァ!?

「何だ…お前か。家の中に通す事もないな。早く用件だけいえよ?別に遊びにきたわけじゃないんだろ?そうだとしても、こっちが願い下げだ…」
「何で僕がお前に何かしてやらなきゃいけないんだ?僕たちは別に友達でもないだろう?」
「君には僕のマンガを理解するセンスがないからな…いくら成長したとはいえ、僕のヘブンズドアーがちゃんと働くかどうか…」
「おいおい、何力んでんだよ…僕に本にされたから、不都合な事書かれるんじゃないかってビビッてんのか?」
「おいおい、礼なんか言うなよ?僕は長期滞在になってる康一くんの事が心配だし、承太郎さんとジョセフさんの頼みでもあるからお前の望みをかなえてやったんだ。別にお前の事が好きになったからじゃあない…そう、勘違いされたら困るからな。さぁ、用は済んだろう?もう帰ってくれ。お前と遊んでるより、原稿を仕上げなきゃいけないんだ」

 だからオレは露伴んトコ行くの嫌だったんだぜ、チクショー!
 オレだってお前なんか願い下げだぜ!
 …イタリア語さえ、話せりゃあなぁ…

 って、オレ、日本出る前からこの電車まで、ずっとこの調子だな…
 サッサと用事片付けちまって、ヤな事全部忘れるために康一とどっか遊びに行きたいもんだぜ…

 ところで、オレの乗ってるこの電車合ってんのか?
 承太郎さんのセッティングした康一との待ち合わせ場所は、こっちでいいはずなんだがなァ〜?
 しかしまた、何でコロッセオ正面入口前なんだ?
 こっからツェペリさんの家が近いのかぁ?
 まぁ、目立つ事は目立つけどよォ…
 ケッコー日本の電車と違って、長く感じるもんだぜ…このまんまじゃ、チコクペースだな…
 ま、地下鉄だからフーケーとかちっともかわらねーけどよォ…
 ま、これも異国情緒ってヤツッスかァ〜!?
 ってカンジは、見事にね〜よなぁ…

 オレはこん時、ノンキコイてた。
 そして、露伴にムカついてた。
 まさかこの後、あんな事が起こるなんて想像もしなかったからなァ〜…

 突然、列車が止まった。
 座ってたとはいえ、急停車なんかされて、アタマ来ないヤツはいないよなァ〜!?
 周りの乗客もビビってんじゃね〜か…
 イタリアって、みんなこんな運転なのかぁ〜?
 まぁ、フェラーリとか走ってる国だしよォ、高速ってのはなんとなくって…

 おい、なんかおかしなヤツら、なんでオレの向かいの窓割って入ってきてやがんぞォ〜!?
 …イタリアでは、こんな途中乗車もあんのかあァ〜!?
 ガイドブックに載ってね~ぞ!?


7. 復讐


 ついに、実行の日が来たズラ!
 オレを半死半生まで追い込んだ、シーザー・ツェペリに対しての報復の瞬間が!
 仲間を、主を皆殺しにした、波紋戦士たちを根絶やしにする日が!
 そして、このオレが世界の帝王になり、人間を殺し尽くす時が!

 NNNNN〜!!
 人限ども!
 血、カラカラになるまで吸い取ってやるズラ!

 …結局、闘わずして敗れ去ったオレを待っていたのは、静寂と、慢性的な時の流れだけだったズラ…
 変化のない毎日。
 本当にオレが「時を刻んでいるかどうか」すら、わからなかったズラ…
 しかし…

 つい一月ほど前、その静寂を破る者たちが現れたズラ!
 オレのいた「旧隠れ家」に、何人もの人間が押し寄せてきたズラ。

 人間!
 身勝手で、自分勝手な増殖を行なう生物!
 自分が「万物の霊長」だと思い込んでいる種族!

 しかし、ヤツらはオレの存在を知らなかったズラ。
 その「霊長」と増長するものを喰らい、その生命を糧とする存在を!
 「霊長」をさらに超えた、至高の存在を!
 つまり、オレをだズラ!

 …24人、骨も残さず喰らったズラ…
 こうして、「食」という一つの「欲求」が満たされ、そして次の欲求が起こる。
 それは「報復」だズラ。
 オレをこんな目にあわせ、オレから全てを奪った波紋戦士シーザーに復讐する!
 それが、オレにとって「最高のエクスタシー」をもたらし、そして「安心」をもたらす事は間違いなかったズラ…

 幸いにして「人間を喰らい、生命を吸い尽くす」事で、俺の波紋傷もいくぶんか良くなったので…
 オレは、「全ての始まり」であるローマへと帰る事にしたズラ。

 時が変わっても、人が変わっても、オレの「目覚めた」空間はオレに安らぎを与えてくれる…
 安らぎだけでなく!
 ローマという都心は、無尽蔵の食糧とエクスタシーをオレに与えてくれるズラ!!

 さらに、あのシーザーという男が話していたのは、確かにイタリア語!
 ヤツを…必ず殺すズラ…

 そして、1ヶ月。
 「屍生人」を利用して、ヤツの住む場所の調査も終了、その間にオレの能力開発も充分に行なえたズラ!
 そして…
 オレの「食べカス」である、屍生人を利用した「秘密兵器」も!!

 今のオレの能力!
 秘密兵器!
 そして、ヤツの「老い」!
 オレがおいぼれ波紋使いに負ける要素など、考えられないズラ!

 そして…
 シーザーを殺した後、ローマ中を「狩猟場」にしてやるズラ!

 いよいよ今日!
 60余年の恨みを晴らす時が来たズラ!!


8. スタンドVS屍生人


 いや、そんなバカな話はねぇ!
 どう考えたって、窓から入ってくるなんざ異常だぜ!?
 ナニモンだコイツラはァァ〜!?
 この、腐ったような臭い!?
 …つーか、こいつら人間じゃねぇ!
 よ…よく見ると、顔も一部一部…
 グエッ…
 虫食いのスタンドの被害者並だぜ…

 これは…
 こいつら、オレの持ってる資料にある吸血鬼かッ!?
 しかも、話が違うじゃねーかよォ!?
 どう見たって、今乗り込んできただけで6匹はいるぜ…!
 と、とりあえずブチのめすか!?

「URRRRRRYYY!存分に腹を満たした後に、オイボレをブチ殺すズラァァ!」

 何か、一番後ろにいる大柄のオッサンが言ってやがるぜ!
 こいつがリーダー格かァ!?

 って…
 この車両にいるの、オレだけ!?
 ってコトは…
 腹を満たすクイモンって、この仗助くんかァ〜!?

 お、おい!
 い、いきなり飛び掛るなって!
 し…仕方ねぇな!

ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァ!!

 とりあえず、飛び掛ってきた2匹の「吸血鬼」を叩きのめす。
 これで、残りは…

 ぐ…グレート…
 やっぱこの程度じゃ、死なねぇかよ…
 余計に顔がグチャグチャになって、気持ちわりいぜェ…

「な、なんだズラ!?」

 大柄のオッサンが叫ぶ。
 他の吸血鬼にも「見えて」ね〜ようだ…
 ふぅ、最悪の状況は免れてるみたいだな…

 この「吸血鬼」どもが「スタンド使い」っていう、最悪の状況はよォ〜…

「お…お前、何した…ズラ?まさか…は…『波紋』!?」

 「見えねぇ攻撃」で、かなりビビらせる事に成功したな…
 だけどよォ…
 1対6の状況、ここからどうしようか…
 ヘビーだぜ…

「お…オーノーだズラ!は、波紋使いを始末する前の腹ごしらえに、別の波紋使いに会うとは… こ、こうなったら前哨戦ズラ!お前なんかかるーくやっつけて、細切れにして喰ってやるズラッ!」

 吸血鬼どもが、オレに集中攻撃の構えを見せる。
 や…やっぱり、この旅行、最初からついてねぇ…

 その時、だ。
 オレは、オッサンの後ろに他の吸血鬼どもと明らかに違う「ヤツ」がいる事に気付いた。

 な…なんだコイツはァ〜!!

「お前も行くズラ!チェーザレ!!」


9. 康一君と老人と


 ローマのコロッセオ前…
 ここで東洋人の「少年」は空条承太郎の依頼を受け、来るべき人を待っていた。
 一人は自らの親友である、東方仗助。
 そしてもう一人は…

「君が…コーイチ・ヒロセか?」

 見た目初老の男が「少年」に話し掛ける。

「はい…そうですが。あなたが、シーザー・ツェペリさんですか?」

 コーイチ・ヒロセと呼ばれた少年は逆に聞き返す。

「そうだ…年より若く見えるので、驚いたかい?これが、『波紋』の力だよ…」

 正直、広瀬康一は驚いていた。
 齢80を過ぎて、シーザーはなお50〜60歳の外見を保っており、若かりし日の「美男子」の蔭を忍ばせている。
 自分に渡された写真は、正直少し昔に撮ったものだと思っていた。
 ところが、目の前に出てきたツェペリは、まさに写真のそれそのままだったのだ。
 そして康一に向かい、初対面とは思えないほど気さくに話し掛ける。

「わざわざ、すまないね。私と、私の門弟のみで片付けられたら問題はないのだろうが…ひょっとしたら、ジョセフも持っている『スタンド』とか言う力を、今回の相手が持っていないとは限らないからね…」

「あの…質問なんですけど。何で、その『吸血鬼』が復活したって…」

 康一の質問を途中まで聞いた所で、シーザーは答える。

「ああ…数日、吸血鬼によって『屍生人』とされた者…ま、簡単に言えばゾンビが、私の周りをコソコソとかぎまわっていたのでね。数十年前、ジョセフと一緒に吸血鬼を大掃除した事があったが、おそらくその生き残りだろう。キミももう知っていると思うが、吸血鬼は世に放していい者ではない。人類の存亡にも関わってくるだろう…今回、キミとジョースケにも協力してもらって…完全に吸血鬼を根絶やしにしたいのだ。これは私の祖先とジョースター家の祖先の問題でもある。…わかってくれるね?」

 康一は力強く頷く。
 康一はシーザーの眼から、ジョースター家の血統と同じ「正義の心」や「優しさ」、
 そして「血統への誇り」を感じた。

 この瞳は、どれだけの邪悪を憎み、人間を愛してきたのだろう―

 康一が想像している所に、不意にシーザーが切り出す。

「ところで…ジョセフの息子のジョースケは?まだ来ていないのかね?」

「はい…そうみたいなんです。いっつもはチコクなんかしないんですけど…」

「…まぁ、異国で戸惑う事もあるんだろう。キミみたいにイタリア語が流暢ならば、問題はないんだろうがね…しばらく、待とうか…」

こうして、老人と少年はともに「もう一人の男」を待つ事となった。

「…ところで、さっきから向こうで自動車の事故が多発しているようだが…何かあったのかな?キミは見えるか?コーイチ…」


To Be Continued !!



ついにこの人までプレイヤー・キャラとして登場してしまったか。鋼線のベック、見参!
タコの頭にハチマキ巻いて、ギュゥッと絞めても絞まらないズラ〜!
こいつはグレートにヘビーだぜ。
逃げ場のない地下鉄で仗助くんは、わりかしピンチ!?
新手の屍食鬼(?)、チェーザレがベックとともに迫る!

葉水加狂さんと坂崎悠乃さんは、次のラウンドに向けて、それぞれ、自分のキャラが『何をしたいか?』、『何をしようとするか?』などをテキトーに書いてメールにてお送り下さい!


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対戦ソース

葉水加狂さんの「ワイアード・ベック」 / 坂崎悠乃さんの「東方仗助」


この対戦小説は葉水加狂さんと坂崎悠乃さんの対戦ソースをもとにかいがらが構成しています。
解釈ミスなどあるかもしれませんがご容赦ください。
葉水加狂さんと坂崎悠乃さん及び、ベックと仗助にもありがとう!

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