Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON

梅干しさんの「フォーエバー」

VS

グレェェトさんの「岸辺露伴」

マッチメーカー :海月なみ
バトルステージ :動物公園
ストーリーモード :Semi Fantastic Mode


双方向対戦小説ジョジョ魂



ROUND  4

いつか見た永遠

 

1.騙す者

「逃がさないわよッ!」

祐子は走り去る二人を見て、右手を上げた。

「行け!セイヴィアー!!」

かけ声とともに、背後から無数の紫色の蜂が飛び出した!

「フォーエバー!」

「ギィッ!」

合図をした露伴とフォーエバーは、一斉に二手に分かれて走り出した。

追いかけようとするが、闇の中に紛れて二人の姿は見えなくなった。

「くっ……」

”この位置ではセイヴィアーの攻撃は届かない……”

祐子は二人が逃げていった方向を見比べた。

”さっきの木の根の攻撃……あれは一体何だったのかしら?

オランウータンの仕業か、それともあの男……どっちにしろ厄介な敵になるわね……”

祐子はとりあえず露伴の方を追うことに決めた。力の強いオランウータンよりも、人間と戦う方が

負傷する確率が少ないと思ったからだ。

祐子はほくそ笑んで、アスファルトを蹴って闇に足を滑らせた。

 

「行ったか……」

木々の間に隠れて、露伴は思考を続けた。

とりあえずあの女……佐藤祐子の攻撃を避けることは出来た。

しかし……このまま隠れ続けるわけにはいかない。

「うまくいったかな……アイツ……」

”あの女はまだ僕の能力に気づいてはいない……その隙をつけば僕に勝機がある!”

露伴は背後の建物を見上げ、次なる戦略を練っていた。

「頼んだぜ……フォーエバー!」

 

”あれは……!”

足を止め、祐子は眼を見開いた。

彼女の目に映ったのは、木々の合間を縫って走り去る露伴の人影だった。

”……馬鹿なヤツ!”

露伴は祐子に気づいていないのか、黙ったまま動かない。

一歩、二歩、祐子と露伴の差は縮まっていく。

祐子は一気に林を抜けて、広場に躍り出た。

「もう逃がさないわよ!!」

勝ち誇った瞬間、突然、露伴の人影がゆっくりと崩れ落ちた。

「なに!?」

祐子が声を上げる間もなく、露伴は土と落ち葉の枯れくずに変わり果て、地面に重なり落ちた。

”……騙された!?”

祐子は一瞬呆気にとられて、動きを止めた。その時、木の葉が四方八方から襲いかかった!!

”いけない!!”

気づいた時は既に遅く、フォーエバーの攻撃が祐子を襲った!

「ぐあっ!!」

祐子は防御の姿勢をとりきれず、木の葉に切り裂かれた作業服の間から赤い鮮血が飛び散った。

隙を逃さず、フォーエバーはさらに攻撃を仕掛けた。

枝がしなり、祐子の顔めがけて叩きつける。

「フォーエバー!」

祐子の死角の木の陰から露伴が現れた!!

「ヘヴンズ・ドアーッ!!」

露伴の背後からスタンドが放たれ、祐子に襲いかかった!

”やったか……?”

露伴は祐子の姿を見つめた。

しかし、次の瞬間飛び込んできた光景に露伴は目を見張った。

祐子の腕に、顔に、全身に、紫色の蜂がびっしりと張り付いている!

「もしもの時のために、半分残しておいて正解だったわね……」

蜂の大群の隙間から、祐子のくぐもった声が聞こえた。

”しまった……これでは書き込めない……!!

「はあッ!!」

華奢な外見からは想像もつかないような叫びを上げて、祐子はセイヴィアーを放った。

「うわぁッッ!!」

祐子が攻撃を仕掛けようとしたとき、地面から水飛沫が上がった!!

「何!?」

フォーエバーがとっさに地中の水道管を操って、姿を隠したのだ。

水しぶきが収まったとき、二人の姿は何処にも見えなかった。

「ふふん、逃げてもムダよ……」

祐子は余裕の笑みを浮かべて、どこへともなく歩き出した。

 

 

「なんとか逃げ切ったか……」

フォーエバーと露伴は息を付いた。

いつの間にか東の空が白やんでいる。夜明けがもう近い。

「フォーエバー、もし俺が……」

露伴が言いかけたとき、突然、何者かががフォーエバーに襲いかかった!

「ギィッ!」

敵を振り払って、フォーエバーは目を見張った。

それは、大小さまざまな猿の群だった。

しかし、それらは普通と違うのは、どの猿にもみな人間の顔が張り付いているということだった。

猿たちは牙を剥いて、次々に二人に襲いかかってきた!

「フォーエバー、頼むッ!」

「ギィッ!」

フォーエバーは猿たちの群れの前に立ちふさがった。

「ギイッ!!」

異形の猿達の牙が、爪が、フォーエバーの体皮を傷つけていく。

それでもフォーエバーは猿たちを振り払い、力任せになぎ倒していった。

「ウキャァーッ!!」

最後の一匹が残ったとき、そいつは背を向けて一目散に逃げ出した。

”これはワナかもしれない。自分達を誘って確実に仕留めるつもりかも……”

”どうする……?”

露伴はフォーエバーの顔を見ながら、静かにうなづいた。

「行くぞ。フォーエバー」

 

 

2.凶兆のサイン

薄日が雲の間から射すようになった。

フォーエバーと露伴は、自分を襲撃した猿を追って昆虫公園までやってきた。

公園は全体がガラス製の温室で覆われており、中には様々な木々や草花が鬱蒼と茂っている。

薄暗く見えにくい視界と相まって、そこは本物のジャングルの様に見えた。

「妙に蒸し暑いな……ここは」

暗闇に覆われた密林を、神経を張り巡らせながら慎重に前に進む。

"大丈夫か?怪我してないよな?"

「ああ…」

露伴は周囲に気を配りながら生返事をした。

すると、どこからともなく耳障りな羽音が聞こえて来た。

間もなくオレンジ色の群れが、フォーエバーと露伴の目に飛び込んできた。

「来たぞッ!!」

フォーエバーは拳を、露伴はペンを宙に走らす。

「くそッ!!」

視界が悪く、思うように攻撃体勢に踏み込めない。

焦っていると、後方から鳴き声のような音が聞こえてきた。

密林をかき分けて、獣身に人面のついた異形の獣たちが爪を振るって襲いかかる!!

「ウギィーッッッ!!」

フォーエバーはスタンドを振るい、手当たり次第に攻撃していった。

「やめろ!攻撃するな!!」

元々は普通の人間達だ。まだスタンドを解除すれば元に戻る可能性がある。

露伴は大声を上げてフォーエバーを制した。その時、

ザシュッ!!

「ぐわっっ!!」

露伴の左腕に鋭い痛みが走った。サルの一匹が、鉤爪で露伴の腕を引っかいたのだ。

たまらず露伴は地面にもんどりうった。

「くそ……」

露伴の腕から大量の血液が流れ出ていく。

早く本体を、あの女を始末しないと!

プシュッ!

体を上げようとしたとき、露伴は右腕に違和感を感じて、右腕の裾を捲り上げた。

みるみるうちに腕は紫に色に染まり、徐々に露伴の肉体を侵食しようとしていた!!

しまった!やつの攻撃に気をとられている間に…!!

「うッッ!!」

露伴は突然うめいて座り込んだ。

紫色になった右腕と木々の背景が、まるで油絵をテレピン油で溶かしたように重なり合っていく!

「うあ、うああああぁぁぁぁぁ!!!」」

これが、セイヴィアーに攻撃を受けたものの体験した世界なのか!?

”露伴!!”

フォーエバーは慌てて露伴の下に駆けつけようとしたが、露伴が必死に制止した。

「お前がこっちにきたら、お前まで僕に融合してしまう!!」

そのとき、苦しむ露伴のはるか後方に、走り去る祐子の影をフォーエバーが見た。

”あいつ、出口に向かうつもりだぞ!!”

フォーエバーは青ざめた露伴の顔と、遠くに消える祐子を見比べた。

「行け、早く!!」

フォーエバーが無言で頷き、祐子を追い走っていった。

 

 

 

3.大いなる祝福

フォーエバーは走り続け、薄暗く、建物の中に入っていった。

”ここは…水族館か!”

ここには、県下でもかなりの大きさを誇る水槽や、魚達の習性を生かした展示物などがある。

”見つけたぜ!!”

フォーエバーは、展示場の段の上から自分を見下ろす祐子の姿に気づいた。

”これで勝ったと思ってるのか!?”

フォーエバーが威嚇の叫びを上げとき、彼の前に動物達が立ちふさがった。

「これで追い詰めたと思ってるの?あんたには安らぎはあげない。

ぐちゃぐちゃになって死になさい!」

「ギキィッ!!」

”くそっ、こいつらさえいなければ…”

苦戦するフォーエバーの前に、大きな影が立ちふさがった!!

たれた目元に薄い唇、しわのある肌、その見覚えのある顔は…。

”ヨウジロウ!!”

ヨウジロウは猛然と地を蹴ってフォーエバーに襲い掛かった!

ヨウジロウの目はうつろで、瞳の中に輝きを持たない。

”や…やめろ…”

”ヨウジロウとは…戦い…たく…ない!!”

ヨウジロウの攻撃はフォーエバーを容赦なく傷つけていく。

”楽しかった思い出…安らぎ…”

”嫌だ…ヨウジロウを…傷つけたく…ない!”

「ギキィーッッ!!」

フォーエバーの叫びがあがった途端、ヨウジロウの動きが止まった。

それと同時に他の動物の動物達もぴたりと足を止め、フォーエバーとヨウジロウを見つめた。

「なッ!馬鹿な……」

祐子の顔に狼狽が走った。

何故、どうして私の命令に従わないの!?

「あ、…あ…う…」

「ギィ…」

しばしにらみ合った後、ヨウジロウはくるりと後ろを向き、祐子へと突進していった!

ヨウジロウは祐子に組み付き、必死に動きを止めようとする。

何?まさか…こいつは!?

「くそッ、くそッ離せッ!!」

祐子に蹴飛ばされて、ヨウジロウは地面へ吹っ飛んだ。

「ったく、雑魚のくせにうざいことしてるんじゃないわよ!!」

”ヨウジロウ!?”

地面に倒れたヨウジロウは、血を流しながら痙攣していた。

「ギィッ!!」

”ヨウジロウ!”

フォーエバーは祐子とヨウジロウを凝視した。

”う…う……”

”力……”

”今…ヨウジロウを救う力があったら…”

”ヨウジロウ…ヨウジロウ…!!”

「ウオゥワァァアァアーー!!!」

フォーエバーは激しい咆吼を上げ、怒りを爆発させた!!

 

4.悲しき救世主

 

水槽のガラスが割れ、大量の水とともに魚、そして鋭いガラス片が祐子の上に降りかかってきた!!

魚が地面にたたき付けられ、祐子の膝まで水が氾濫した。

「きゃあああああああッッッ!!!」

とっさにセイヴィアーで身を覆い、祐子は自分の身を守ったが、破片が何個かが祐子の体をかすっていった。

何種類もの魚が地面にたたき付けられ、祐子の膝まで水が氾濫した。

さらに突然、大きな地響きが鳴り響き、祐子の足下が揺らいだ。

「な、何?」

祐子の膝まで覆っていた水が急激に引き始め、一点に集まっていく。

水が塊となって形を成していき、まるで山のように大きく膨れ上がった。

「こ、これは…」

様子を見ていた祐子は目を疑った。

そこに現れたのは、巨大なオランウータンの形をした水塊だった。

これがフォーエバーの新しい能力、

フォーエバー・アメージング・グレース!!(大いなる祝福)

 

「フォーエバーッ!」

腕を負傷した露伴が水族館内に駆けつけてきた。

「…!これは!?」

露伴は目の前の光景に息を呑んだ。

巨大な猿の形をした水塊が、祐子と戦っている!?

 

「グワッッ!!」

祐子は水塊に殴り飛ばされて、後方へ吹き飛んだ。

「くそっ、セイヴィアー!!」

祐子がセイヴィアーを放っても、セイヴィアーは水の中へと吸収され、力を失ってしまう。

だめだ、よけられ…

「きゃぁッッ!!」

再び水塊に投げ飛ばされ、祐子は壁にたたきつけられた。

 

「すごい…」

露伴はフォーエバーの能力に驚嘆していた。

今やフォーエバーの戦闘能力は、完全に祐子を凌駕している。

一体何が、フォーエバーにそれほどの力を持たせたというのだろう。

嘆き、苦しみ、怒り、それとも……。

そう思って、露伴はかすかに微笑んだ。

多分そのどれでもない。洋二郎からフォーエバーから得た一番大切な力……。

今ならきっと、その力を存分に使いこなせるだろう。大切な人間の為に…。

 

「ぐぶぅわッ!!」

水塊が祐子を床に叩きつけた!!

「舐めないでよ、私だって…」

祐子がフォーエバーをにらんで立ち上がった時、呆然として両の手の平を見た。

その手のひらは真っ赤に染まっている。

「血、血が……血がこんなに……」

祐子はぶるぶると震え始めた。

「嫌、嫌、嫌ぁぁぁぁッッ!!」

祐子は鬼のような形相でフォーエバーに向かっていった。

「許さない、許さない、ゆるさなぃぃぃ!!」

「ヘブンズ・ドアーッ!!」

ドーンッ!!

露伴の能力が的確に祐子を捉え、祐子はなすすべもなく地に伏した。

 

 

「気がついたか?」

倒れ込んだ祐子を、露伴と承太郎が覗き込んでいた。

祐子は慌てて飛び起き、セイヴィアーを出そうとした。が、何も起きなかった。

「一体何をしたの?」

祐子は焦って露伴達を見た。

「どうってことはない。ただ、君のスタンドを封じただけだ」

「そんな……」

みるみるうちに祐子の顔が怒りで赤くなる。

「何で……なんで邪魔するのよッ!!あたしはただ、みんなに安らぎを与えたかっただけなのに!!

苦しみのない世界を作りたかっただけなのに!」

「勝手なことを言うな!!」

露伴は珍しく、強い語気で荒々しく言い放った。

「見ろ!!こいつの顔を!」

露伴はフォーエバーを指さした。

「こいつは、ヨウジロウを失って苦しんでるんだ。わかるか!?」

お前と同じように、大事な人を失って……」

露伴は祐子を睨み付けた。

「どうして分からなかったんだ。同じ苦しみを持っているヤツの気持ちを……。

お前は、こいつの、ささやかな安らぎを奪ったんだ……」

「…………!」

祐子は口を閉ざし、低くうなだれた。

彼女の大きな瞳から、音もなく涙がこぼれ落ちた。

 

 

5.エピローグ

露伴達が佐藤祐子を倒して間もなく、行方不明になった者達が次々と動物公園から戻ってきたという

ニュースが町中に流れた。

彼らには行方不明になっている間の記憶が全くなく、誰一人自分の身に何が起きたのか分からなかった。

集団失踪や家出騒ぎなど、様々な憶測がとんだが、結局真実を知る者は居なかった。

ただ、彼らを除いては……。

 

「おい、いるか、フォーエバー」

数日後、フォーエバーの居る檻に露伴が現れた。

”何の用だ?”

「ふふん……これさ」

悪戯っぽい笑みを浮かべて、露伴はフォーエバーに1冊の雑誌を手渡した。

"……これは……”

ページをめくっていたフォーエバーは、ある漫画を見てふとその手を止めた。

その漫画は露伴の描いた「ピンクダークの少年」だった。

”な、なんだコレ!!”

主人公の少年を今にも喰らわんばかりに襲っていたのは、、自分そっくりのオランウータンだった。

「どう?気に入ったかい?」

露伴は今にも吹き出しそうな顔でフォーエバーを見ていた。

”これじゃ、二枚目が台無しじゃねーか!”

「おいおい、これでもオマケしてやったんだぜ?」

”全く、よく言うぜ……”

二人は苦笑して、空を見上げた。

陽光が眩しい、美しく澄んだ青空だった。


THE END






佐藤祐子(敗北)

フォーエバー&岸辺露伴(勝利!)



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対戦ソース

梅干しさんの「フォーエバー」 / グレェェトさんの「岸辺露伴」


この対戦小説は 梅干しさんとグレェェトさんの対戦ソースをもとに海月なみが構成しています。
解釈ミスなどあるかもしれませんがご容赦ください。
梅干しさんとグレェェトさん及び、フォーエバーと岸部露伴にもありがとう!

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